RESEARCH
えっ、こんなところにも!?
東京メトロ車両を支えるアルミのひみつ
Featuring
東京地下鉄株式会社
唐澤 康平さん
Featuring
東京地下鉄株式会社
渡部 智也さん
Interviewer
UACJ
森本 卓也
Interviewer
UACJトレーディング
大久保 賢豊
都市部の交通インフラを支えている東京メトロ。毎日なんとなく乗っているけれど、じつは車両のあちこちにアルミが使われているって知っていますか?今回はUACJきっての鉄道好き、森本と大久保のふたりが東京メトロの車両基地を訪問。アルミの活用や車両設計におけるこだわり、そして未来のサステナビリティについて。車両の素材を「つくる人」と「使う人」、両者の視点から語り合ってきました。
車両の設計に携わる東京メトロの唐澤さん、渡部さんご案内のもと、まずは車両基地の見学へ。現役の車両を間近にして鉄道熱は一気に上昇!興奮冷めやらぬなか、いざ取材スタートです。
アルミはどこに、
使われているの?
唐澤
構体(車体本体)のほかに、車内の壁やパネル、荷棚、吊り広告のフレーム、座席の裏板もアルミです。
森本
へえ!車体がアルミということは知っていましたけど、内装部分にも多用されているんですね。
唐澤
そうですね、おそらく全部品のうち、7~8割はアルミでできていると思います。
大久保
そんなに!?びっくりです。
唐澤
お客さまから見えない部分、たとえば客室の壁、電線ササエ金具、機器ツリ金具なんかもアルミです。
森本
鋳物に板材、それに形材も。ほぼ余す所なくアルミをお使いいただいているので、アルミ屋としては嬉しい限りです(笑)。
大久保
逆にアルミが使われていない部分はどこですか?
唐澤
熱が伝わりやすいヒーター部分や耐久性が求められる部分はステンレスを採用しています。
渡部
東京メトロ車両はおよそ50年間使うことを前提にして作られています。なので、お客さまが触れる吊り革の棒部分や、人の足やベビーカーなどが当たる足元の巾木はより耐久性のある材質を選ぶようにしているんです。
森本
場所ごとに素材を“適材適所”で選んでいるんですね。
メトロとアルミ
歴史について教えて!
唐澤
東京メトロがアルミ車両を初めて導入したのは、1966年の東西線5000系アルミ試験車両からです。
森本
60年代というと他社では鉄製車両が主流だったと思うので、かなり早い段階でアルミ車両へ切り替えていたんですね。
唐澤
当時は「軽量化」が最大のテーマで、アルミ車両の採用に踏み切ったと聞いています。
渡部
これは路線の特徴が関係しているんです。地下鉄は走る・止まるという動作が大体500mぐらいの短い駅間で行われるので、発進してから加速する際の電力消費はかなりのものなんです。
大久保
たしかに駅間距離の長い他線とは大きく違う部分ですね。
渡部
はい。電力の消費をなるべく抑えるためには車両の軽量化は必須だったのだと思います。
大久保
車両が軽ければ電力消費も減らすことができる。省エネに直結しますね!
東京メトロはなぜ、
アルミを選ぶのか?
渡部
一番は軽い、加工がしやすいという2点が大きいと思います。加工の自由度が高いので、削ったり曲げたりと、デザインの幅も広がります
森本
車内を見渡しても、梨地加工(*1)をされている箇所や、押出加工(*2)をされている箇所。いろんな技術を使っていらっしゃるのがわかります。
渡部
車両は車両メーカーと契約して作ってもらっているんですが、やはりそこでもアルミは加工しやすいという声は聞きますね。
唐澤
少しマニアックな話になりますが、車体の床構造は鉄製車両やステンレス車両のような横梁を使用せず、カーテンレール形状の機器のつり溝があって、そこに機器が吊り下げられる、「ダブルスキン」と言われる構造になっています。
大久保
へえ!
唐澤
これによって、車両組み立て時の作業や機器配置の変更が容易にできたり、骨組みや外板を一つひとつ溶接取り付けする必要がないので、結果的には作業工数減やコスト削減にもつながっています
森本
素材単体で見るとアルミは「コストが高い」とよく言われるのですが、作業コストまで考えるとトータルコストは安いと言える。私たち素材メーカーにとって見え方が変わる視点です。
大久保
まさに「軽い・使いやすい・お得」の三拍子ですね!
*1 梨地加工…金属やプラスチックなどの素材表面に微細な凹凸を形成し、梨の肌のようなザラザラした質感に仕上げる表面処理技術
*2 押出加工…アルミニウムやアルミ合金を400~500℃の熱間で押出す加工方法
車両のデザイン性にも、
アルミは関係している?
唐澤
実は、メトロ各線の車両先頭部はアルミの削り出しで形を変えています。丸みを帯びたデザインやシャープな形など、路線ごとの特徴に合わせてデザインされているんですよ。
大久保
え!?色だけじゃなく、車両の形状も路線によって違うんですか?
渡部
前から見るとよくわかりますよ。ほら。
大久保
森本
ほんとだ!全然違う。
渡部
一から削り出すので、加工の自由度は非常に高いんです。丸ノ内線の車両は、丸み帯びた形状なんですが、これは削り出しでないと実現できない形です。
大久保
アルミだからこそのデザイン、ということですね。
渡部
あとは、表面にヘアライン加工(*3)を施しているんですが、そうすることで、塗装をしなくても金属特有のギラつきを抑えられて、落ち着いた雰囲気になるんですよ。
大久保
圧迫感がなくて、すっきりしていますね。
唐澤
あとはヘアライン加工を入れると、部品のつなぎ目、溶接線が目立たないという利点もあります。
森本
間近で見てもどこで溶接されているのか全然わからないですね。
唐澤
毎日使うものですから、安心感や快適さをデザインでも届けたいんです。
*3 ヘアライン…単一方向に細い線状の傷をつけることで、つや消し効果や高級感、傷を目立ちにくくする効果をもたらす表面処理加工
メトロ車両
設計のこだわりを
教えて!
唐澤
設計段階で、なるべく同じ種類のアルミを使うよう工夫しています。これはリサイクルという観点からですね。
渡部
モノアロイ、つまりなるべく同じ合金で統一する発想です。アルミの種類が混ざらない方がリサイクル性はぐっと高まります。
森本
なるほど。
渡部
でもどうしても、強度の観点から部品を固定するためにステンレス製のビスを使ったりしないといけない場合もあります。
森本
確かにそうですね。アルミのビスもありますが、やはり強度が…ですね。
唐澤
工夫としては、ビスを極力使わないまたは減らせる組み立て方法にしています。そうすれば、解体やリサイクルもしやすくなるので。
大久保
実際の現場で、そこまで考えて設計しているのはすごいです。
渡部
多くのお客さまの乗せるものなので、安全性が何よりも第一です。その上で、新しい仕組みや部品に挑戦していきたい。本気で見直せば、まだまだ改善できる部分はあるんじゃないかと思いますね。
森本
挑戦の姿勢があるからこそ、次の時代の車両につながっていくんですね。素晴らしいです!
メトロが取り組む
サステナビリティの
課題とは?
唐澤
車両の“リユース”は少しずつ広がってきていますが、“リサイクル”はまだまだ課題が多いのが現状です。その理由は、やはり先ほどと同じ分解と分別の難しさです。
渡部
部品の材料の種類の統一化はもっともっと進めていく必要があります。
森本
素材をつくる側からすると、材料の種類を増やすことだけじゃなく、絞ることも大事かもしれないです。
大久保
時代性みたいなものも考えないといけないんだな、と改めて今のお話から気付かされました。
森本
でも、そもそも電車というのはエコな乗り物ですよね。排気ガスも出ないですし、1回で多くの人数を運べますし。
渡部
その代わり、運行には多くの電力を使用しています。
森本
それは私たちも同じですね。アルミの製造や加工は水も電気もたくさん使いますから。
渡部
企業として、運行の電力量を削減するための省エネ施策には長年取り組んできましたが、それだけだと自社で完結してしまい広がりがありません。もっとサプライチェーン全体を通してサステナビリティに取り組んでいったほうがいいんじゃないか、というフェーズが今だと思います。
森本
そこは私たちも考えていかなきゃいけない部分ですね。
未来のメトロ車両
どんな可能性がある?
唐澤
アルミ素材の種類の統一を追求して、さらに分別容易な車両設計にチャレンジしたいですね。
森本
将来的には“リサイクル素材100%の車両”が生まれる日も夢じゃないですよね。
唐澤
今まさに廃車した車両から新しい車両へのアルミ素材の水平リサイクルの研究を推し進めているので、将来的にはあり得ると思います。
森本
おぉ、それは胸が熱くなりますね!
渡部
そのためには相互直通運転をしている他鉄道事業者さまとの協力も不可欠です。同じような思想で設計された車両をご採用いただければ、リサイクル方法も統一されて、リサイクル率はグッと向上します。
大久保
業界同士の横のラインも大事ということですね。
渡部
そうですね。リユースの次はリサイクルへ。そのためにも今は部品を見直したりと、将来のための種まきをしている期間だと思います。
唐澤
でも、車両寿命はおよそ50年なので、これから生まれる取り組みが実るのを、僕らは見届けることができないかもしれません(笑)。
森本
今の仕事が未来を作る。それがいいじゃないですか!
で、50年後には、かつての車両を僕らのような鉄道好きが喜んで模型を買うという循環(笑)。これもサステナビリティです!
これからは私たちもお客さまと一緒に“作ったその先”も考えながらアルミを考えていかないといけないですね。よし、頑張っていきましょう!今日はありがとうございました。
一同
ありがとうございました!

AFTER INTERVIEW
UACJ 森本 卓也
東京メトロさんは、1960年代からアルミ車両を導入し、アルミの特徴を生かした車両設計をされているということには本当に感心させられました。また、リユースやリサイクルにも力を入れており、UACJの目指す姿と共通点が多く、共感が持てるインタビューとなりました。私もUACJの一員として、更なるアルミニウムの普及とサーキュラーエコノミーの実現に向けて頑張っていきたいと思います。
Profile
アルミ一筋30年。乗りモノ全般(特に鉄道)が大好きな元営業おじさん。「声の大きさ」と「キャラ」のみで国内外を渡り歩き、今はマーケティング部で新事業探索の冒険中。
UACJ
トレーディング
大久保 賢豊
車体だけでなく、乗客からは見えない部分にまでアルミが多用されていることに非常に驚きました。こうした積み重ねが車体の軽量化につながり、さらには省エネに結び付いていることを実感しました。また、これからの課題としてさらなるモノアロイ化を進めて循環型社会の一員として進化させていこうという点については、UACJグループとしても目指す方向性は同じであると改めて感じました。
Profile
UACJトレーディングで管理部に在籍しています。鉄道ファン歴は40年。メインのジャンルは乗り鉄です。日本全国の地名がすぐに出てくることと、乗換の時に路線図がイメージできて困らない点は、隠れた自慢です。
※こちらに掲載している情報は取材当時のものです
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