TRY
アルミニウムの循環が、
タイの環境意識を変える!
Can to Can Closed Loop
とは?
Featuring
UACJ (Thailand) Co., Ltd. (UATH) Teerapun Pimtong(ボーイ)さん
(バンコク事務所副所長)
Featuring
UACJ (Thailand) Co., Ltd. (UATH) Janya Thanaisawan(ジーナ)さん
(総務課長)
Interviewer
UACJ 辻上玲奈
“使い終わったアルミ缶が、また新たなアルミ缶に戻る”そんなアルミニウムの循環を目指した「Can to Can Closed Loop」の考えが、タイの環境意識を変えようとしています。政府機関や企業、団体が手を取り合い、タイ国内にリサイクルの仕組みをつくる挑戦。UATHでは、2020年からこのプロジェクトに参加し、重要な役割を担ってきました。今回は、このプロジェクトの背景と具体的な取り組みについてご紹介します。
今回お話を聞くのは、UATHのバンコク事務所副所長ボーイさんと総務課長のジーナさん。UACJの海外営業グループの辻上をインタビュアーに、早速インタビュー開始…!とその前に、そもそも「Can to Can Closed Loop」とは何かをサクッとご紹介します。
「Can to Can Closed Loop」とは?
タイ国内でアルミ缶の100%クローズドループリサイクルを目指し、政府機関、環境団体、民間企業などが協力・連携して推進されている大きな取り組みのこと。活動の一環として、アルミ缶の回収から再利用といった循環の旅「Can to Can Journey」を、実際の現場で見ることができるイベントも行われています。
なぜ今タイで
アルミニウムの循環が
注目されるの?
ボーイ
いい質問ですね。まず“なぜ”というところにお答えすると、そもそもタイは他国と比較すると、リサイクルに関する知識や意識はあまり一般に浸透していません。日本のような分別の仕組みもないのです。
辻上
そうなんですね。
ボーイ
そこで、私たちはアルミニウムの循環からリサイクルの考えをタイで浸透できないかと考え始めました。アルミニウムは環境負荷が低く、サステナブルな素材。タイ政府としても、国全体で環境意識を高めることは重視しているので、アルミニウムには注目をしてくれています。
ジーナ
UATHは、年間32万トンのアルミニウムを生産する体制や、UBC*1から、再生アルミを生み出す循環システムを備えています。アルミニウムの循環をリードする企業として、この取り組みは必須と考え、立ち上げから参加しています。
*1:Used Beverage Can/使用済み飲料缶
辻上
アルミニウムがタイ国家全体のリサイクル、環境意識を変えていくという、とても大きな構想ですね。
ボーイ
はい。このアルミニウムの循環を「Can to Can Closed Loop」と呼んでいます。1社だけでは、当然この循環は実現できませんから、政府機関や業界各社と手を組んでいます。
辻上
なるほど。
ボーイ
プロジェクトが始動した、2020年から2025年までの5年間で行った主な取り組みは次の通りです。
2020年11月:
Can to Can Journeyイベント開催
(第一回、第二回)
2020年11月:
BIG MOU締結
2021年11月:
SMALL MOU締結
2022年7月:
Can to Can Journeyイベント開催
(第三回)
2024年7月:
Can to Can Journeyイベント開催
(第四回)
2025年10月:
新BIG MOU締結
Can to Can Journeyイベント開催
(第五回)
辻上
いろいろありますね。この後、一つずつ詳しく聞かせてください!
どんな連携をしている?
ボーイ
主にはタイ政府機関、UATHのような素材メーカーや製缶企業、飲料ブランドを展開するブランドオーナーなどがこのプロジェクトに参加しています。
辻上
具体的な連携として、MOU*2の締結が行われたのですね。
*2:Memorandum of Understanding/基本合意書
ボーイ
はい。リサイクルのさらなる推進に向けて、まずは連携の“枠組み”を作ることに取り組みました。それが2020年11月のBIG MOU締結です。
辻上
どういった目的で合意が行われたんでしょうか。
ボーイ
「アルミ飲料缶のリサイクル促進」と「サーキュラーエコノミー(循環型社会)の推進」の2つを目的としています。締結に参加したのは、政府機関(天然資源環境省)、環境団体、民間企業、大学、そして私たちUATHを含む7団体です。
出典:「MOU “Transparency of Aluminium Can Closed-Loop Recycling”」
Aluminium Loop プロジェクト公式サイト
辻上
アルミニウムに関わる企業だけではなく、教育団体や環境関連の非営利団体なども含まれているんですね。とても大きなプロジェクトだとわかります。
UATHの役割は?
ボーイ
ズバリ言うと、UATHがいなければCan to Can Closed Loopは成り立たないと言っても過言ではありません。
辻上
それはなぜですか?
ボーイ
私たちUATHは、年間32万トンのアルミニウムを生産する体制や、UBCから、再生アルミを生み出す循環システムを備えています。アルミニウムの循環をリードする企業として、社会に対して大きな責任があると認識しています。
辻上
まさにCan to Can Closed Loopの根幹部分ですね。ちなみに、BIG MOUに続いて2021年にはSMALL MOUも締結していますね。これはどのような連携なんでしょうか。
ボーイ
SMALL MOUは、BIG MOUをもっと具体的な施策をしていくための連携です。UATHの他、タイの大手製缶メーカー、飲料・容器メーカーなど4社が参加しています。
出典:Closed Loop Recycling System
Aluminium Loop プロジェクト公式サイト
ジーナ
SMALL MOUでは具体的な目標として月間100トンのUBCを回収、リサイクルするということが掲げられています。
辻上
より具体的な目標ですね。
ジーナ
初年度の回収量目標は6000トン。それに対して実績は9000トンで、想定を大きく上回りました
辻上
初年度から目標を達成するというのは、すごいですね!
具体的な取り組みについて
教えて!
ボーイ
大きくは対外的な取り組みと、UATH社内での取り組みの2つに分けられます。まず、対外的な取り組みの一つが、タオ島における包装廃棄物管理プロジェクトです。
辻上
島でのプロジェクトですか?
ジーナ
はい。タオ島は小さな島ですが、世界屈指の観光地として人気です。観光客の出入りも多いため、ゴミ問題や廃棄物処理が追いつかないという課題を抱えていました。そこで、回収・再資源化のモデル地区として取り組むことになったんです。
辻上
日本でも観光地でのゴミ問題など、住民の方が悩まされているというニュースはよく聞きしますね。具体的には何に取り組んだのでしょうか?
ジーナ
島の店舗で販売されるビールや飲料についてガラス瓶に入ったものを、アルミ缶に変えていきました。
辻上
かなり地道ですね…!
ジーナ
でも、これがとてもインパクトがあって。2023年9月から開始したのですが、同年の11月にはガラス廃棄物が1日あたり平均5トンあったものが、わずか1トンにまで減少したんです。
辻上
え!たった2ヶ月で、ですか?
ボーイ
それだけではなく、アルミニウムの使用量が増えたことで、50〜60%のごみ削減という成果も出たんですよ。
辻上
どうして、アルミニウムに変えることがごみ削減につながるのでしょうか?
ボーイ
ビンはアルミニウムよりも重たく、単価も安い。一方で、アルミニウムは軽くて、単価も高いです。このことから、輸送コストや回収負荷の大きいビンはあまり回収が進まず、アルミニウムに変えたことで回収率が上がって、島のごみが減ったのです。
辻上
なるほど!ゴミが減ることで、環境改善にもつながるということですね。
アルミニウムの循環を知る
Can to Can Journey
イベントとは?
ボーイ
対外的な取り組みの2つ目ですね。これはアルミニウムの回収・リサイクル工程に関わる企業の現場(工場)を実際に見ることができるイベントです。
ジーナ
このイベントは、Can to Can Closed Loopについて政府機関や業界関係者の方々に理解を深めてもらうという目的があります。
ボーイ
主に政府機関関係者や大学関係者、UATHのお客様などを招待しています。2020年に第一回目があり、そこから定期的に開催され、2025年で6回目になります。
辻上
UATHではどんな場所をお見せしているんですか?
ジーナ
アルミ再生に関わる設備・工程をご案内しています。見学しながら、UBCが新しいアルミニウムに生まれ変わるまでをご説明しています。
辻上
アルミニウムはサステナブルな素材であるということを、その仕組みごとお客さまへ理解していただくのはなかなか難しいと私も日頃感じています。こういった現場へご招待できるイベントは良い取り組みですね。
ボーイ
この活動は、未来への投資だと思っています。アルミ缶のリサイクルという単純なことではなく、地球環境に貢献する取り組みでもありますし、企業視点で言えばインダイレクトセールスでもあります。アルミニウムの強みを知っていただくことで、新たな市場の開拓にもつながるのかなと。
辻上
すばらしいですね。 未来を見据えつつ、企業活動にもつなげていく。とても参考になります。
社内的な取り組みも
教えて!
ジーナ
いろんな取り組みをこれまで行ってきましたが、すべての目標は、従業員の環境問題への貢献と意識向上、自社製品であるアルミ缶に関心をもっと持ってもらうことです。
ボーイ
アルミ缶を“選ぶ”ということ自体が環境改善につながるのだという意識を社内でも根付かせていきたいという狙いですね。
ジーナ
実は、以前までは、UATH社内でも従業員の多くがペットボトル飲料を飲んでいました。そこでまずは、社内販売の飲料類をペットボトルやビンから、アルミ缶に変えていったんです。そこから徐々にアルミ缶飲料を飲む従業員が増えていったんです。
辻上
まさに、“意識の変化”ですね。
ボーイ
ほかにも、オリジナルのアルミボトル缶ウォーターの開発にも取り組んできました。アルミニウム産業会と共同でオリジナル缶を開発し、タイ初となるアルミボトル缶ウォーターが誕生したんです!
左から初代、2代目、3代目。初代、2代目のステイオンタブタイプ(開口時にタブが缶本体から切り離されず、ついたままになるタイプ)のものから、3代目ではユニアロイを採用したボトル缶タイプへ進化している。
辻上
開発されたアルミボトル缶ウォーターはどのように活用されているのでしょうか?
ボーイ
社内で来客へ配布する他に、地域への広報活動の一環として配布したり、災害時には寄付をするなどしています。
辻上
とても良い活用ですね。その他にも社内の取り組みはありますか?
ジーナ
2021年から従業員が自主回収したジュースやビールなどのアルミ飲料缶を、社内で買い取るというキャンペーンを実施しています。
キャンペーンの改修目標は年間100kg。初年度は60〜70kg程度を回収し、2025年11月現在では100kg近くまで回収されている。
辻上
おもしろい取り組みですね。従業員の参加を促す工夫などはあるんでしょうか?
ジーナ
社内広報を積極的に行うことや報奨金制度、社内表彰などに力を入れています。
ボーイ
上位10名にはギフトバウチャーやオリジナルのTシャツなどの賞品もありますよ。私の勤務するバンコクオフィスの従業員は、毎年上位にランクインするのですが、「Tシャツが欲しい!」と言っていました。
辻上
みなさん楽しみながら参加されている証拠ですね。
ジーナ
辻上さんもタイにいらっしゃる時は、ぜひアルミ缶を持ってきてください。Tシャツを差し上げますよ!
辻上
私も参加できるんですか?うれしいです!
5年間の取り組みで、
どんな変化が?
ジーナ
社内的な変化としては、意識の浸透ですね。アルミ缶回収量や、キャンペーンへの参加者も年々増えていますし、皆さん進んでアルミ缶飲料を選んでくれています。実際に売店の売上記録を見ても、アルミ缶飲料の売り上げは伸びています。
辻上
効果がしっかりと出ていますね。
ジーナ
この活動は従業員にとっての誇りだと思います。自分の小さな行動が、環境という大きなテーマに貢献できているという実感はモチベーションを高めてくれます
ボーイ
社外的な成果についても、政府の方々へ「アルミニウムは環境に良い」という認識は浸透してきていると思います。「アルミニウムは環境にとってベストプラクティスだ」というコメントもいただいていますから。
辻上
うれしいですね。今後の活動の後押しにもなりそうです。
ボーイ
はい、とても心強いです。私たちのパートナーである製缶メーカーやブランドオーナーにもClosed Loopの理解が深まったことで、“環境のためにアルミニウムを選ぶ”という判断に影響を与えられたのではと思っています。
辻上
環境貢献とアルミニウムが紐づくのはUACJグループ全体としても目指すところですね!
これからの展開は?
ボーイ
アルミニウムは環境にやさしいということはだいぶ浸透してきましたが、今後は、なぜ環境に良いのか、アルミニウムを使ったらどうして二酸化炭素削減につながるのか、そういった具体まで理解いただけるような発信も進めていきたいです。
辻上
もう一歩踏み込んで、ということですね。
ジーナ
身近なところでは、今社内で行なっているアルミ缶回収を、地域に広げて、コミュニティと連携した活動にしていきたいですね。地域ごとにアルミ缶回収をしたり、学校などで子どもたちに対して環境教育を行なったり。
辻上
いいですね。タイのリサイクル意識がますます高まりそうです!
ジーナ
2025年10月には新たなBIG MOUも締結されました。これはこれまでの活動の成果を踏まえ、さらにレベルアップしています。
ボーイ
締結に参加した団体の数は、前回の7つから13に増えました。政府機関の中でも環境部門だけではなく、公害防止部門、海洋沿岸資源部門など。研究部門として新たな大学も加わっています。
辻上
今後タイ政府ではどんな施策が予定されているのでしょうか。
ジーナ
これまでの5年の成果や収集したデータをもとに、税金部分や国境炭素税に関わる仕組み、さらにはEPR(拡大生産者責任)のシミュレーションを行い、法律にも組み込んでいく予定のようです。
辻上
UATHがその枠組みの中心にいることを、同じグループ社員としてとても誇らしく思います。

私は缶材を販売する部署にいるのですが、今日はお二人の熱い思いを聞いて、販売するだけではなくて、その後がどうなっているのかということを勉強するとてもいい機会になりました。ありがとうございました。
ボーイ
ジーナ
ありがとうございました。
UACJ (Thailand) Co., Ltd.
UACJグループの東南アジアの生産拠点。ラヨン製造所は、東南アジア随一の板材圧延工場で溶解工程から一貫生産を行い、年間32万トンの供給体制を構築しています。

https://uath.uacj-group.com

AFTER INTERVIEW
UACJ 辻上玲奈
普段の業務とは視点を変えて、政府や企業を巻き込んだアルミの循環について知りました。インタビューを通して、普段の営業業務における自分の役割を再認識することができました。Can to Can Closed loopは当社の利益になるだけでなく、ごみの削減による環境負荷改善等社会に貢献していることを知り誇らしく思います。
Profile
海外営業グループで、海外のお客さまにアルミニウムを輸出しています。地球儀の向こう側で信頼が芽生えたときに幸せを感じます!
※こちらに掲載している情報は取材当時のものです
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